- 2025.10.31
別荘地内に土地を所有しているもののこれを利用していない者が、当該別荘地の管理会社に対し管理費として相当と認められる額の不当利得返還義務を負うとされた最高裁判例を紹介します。
(事案の概要)
被上告人の会社は、本件別荘地の所有者との間で個別に管理契約を締結し、別荘地の道路等の保全及び維持管理、毎日2回のパトロール実施、道路両脇の雑草の刈込み作業などの管理業務を行い、その対価として管理費の支払を受けていました。
一方、上告人は、本件別荘地内の土地を相続した者ですが、当該土地上に建物を建築しておらず、その土地を利用したこともありませんし、被上告人との間において管理契約を締結したことはなく、管理費を支払ったこともありませんでした。
本件は、被上告人が、上告人らに対し、本件管理業務という労務により上告人らは法律上の原因なく利益を受け、被上告人は損失を被ったとして、不当利得返還請求権に基づき、管理費と同額の支払を求めた事案となります。
(判決の概要)
上告人は、本件管理業務の提供を望んでいない者に対して費用を負担させることは契約自由の原則に反するから不当利得返還義務を負わないと主張しました。
これに対し、最高裁は、「被上告人は、本件別荘地所有者との間で個別に本件管理契約を締結し、本件別荘地において継続的に本件管理業務を提供しているところ、その内容は、本件別荘地を支える基盤となる施設を本件別荘地所有者による利用が可能な状態に保全及び維持管理し、本件別荘地内の土地や上記施設に対する犯罪や災害による被害の発生等を予防し、本件別荘地の環境や景観を別荘地としてふさわしい良好な状態に保つものである。これらによれば、本件管理業務は、本件別荘地が別荘地として存続する限り、その基本的な機能や質を確保するために必要なものであり、また、本件管理業務は、本件別荘地の全体を管理の対象とし、全ての本件別荘地所有者に対して利益を及ぼすものであって、本件管理契約を締結していない一部の本件別荘地所有者のみを本件管理業務による利益の享受から排除することは困難な性質のものであるということができる。そうすると、被上告人の本件管理業務という労務は、本件別荘地内の土地に建物を建築してその土地を利用しているか否かにかかわらず、本件別荘地所有者に利益を生じさせるものであるというべきである。」「本件管理契約を締結していない本件別荘地所有者が本件管理業務に対する管理費を負担しないとすると、これを支払っている本件別荘地所有者との間で不公平な結果を生ずることになるほか、本件管理業務に要する費用を賄うための原資が減少して、本件管理業務の提供に支障が生じ、別荘地の基本的な機能や質の確保に悪影響が生ずるおそれがある」などと判示して、上告人が本件管理業務に対する管理費として相当と認められる額の不当利得返還義務を負うとしました。
(コメント)
現代社会を規律する法律は、契約自由の原則、所有権絶対の原則といった近代法の原則に基づいており、土地に関する権利関係も例外ではありません。
その一方で、土地は公の財産であるとして、そうした原則を徹底することに疑問を投げかける考え方もあるところです(「土地は誰のものか」五十嵐敬喜著・岩波新書)。
本判決は、上告人が主張する契約自由の原則とその他の別荘地所有者との間の公平性を天秤にかけたものともいえるものであり、「土地」というものを考えるに当たり、興味深い判決といえます。


